将棋を始めて基本ルールを覚えたら、次に知りたくなるのが「戦法」です。
戦法とは、序盤の駒組みの方針を決める考え方のこと。プロ棋士はもちろん、将棋が強い人は必ず得意な戦法を持っています。自分に合った戦法を身につけることで、序盤から自信を持って指せるようになり、勝率も大きく向上します。
この記事では、代表的な戦法を「居飛車」「振り飛車」「その他」に分類し、それぞれの特徴、メリット・デメリット、向いている人のタイプまで詳しく解説します。自分のスタイルに合った戦法を見つけて、将棋をもっと楽しみましょう!
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将棋の戦法は、序盤の駒組みにおける「設計図」のようなものです。どこに飛車を配置するか、どのように玉を守るか、どの駒で攻めるかといった基本方針を決めることで、序盤から自信を持って指せるようになります。
ここでは、戦法の定義や役割、そして将棋界で使われる主な戦法の分類について解説します。戦法の全体像を理解することで、自分に合った戦法を選ぶ際の指針になるでしょう。
戦法とは、序盤の駒組みにおいて、どのように駒を配置し、どの方針で攻めや守りを展開するかを決める考え方のことです。
将棋では、最初の数十手で「飛車をどこに配置するか」「玉をどう囲うか」「どの駒で攻めるか」といった基本方針を決めます。この方針が戦法です。
戦法を学ぶことで得られる3つのメリット
将棋の戦法は大きく分けて以下のように分類されます。
| 分類 | 特徴・代表的な戦法 |
| 居飛車 | 飛車を初期位置(先手なら2筋、後手なら8筋)に据えたまま戦う戦法。 代表例:矢倉、角換わり、横歩取り、相掛かり、棒銀 |
| 振り飛車 | 飛車を盤面左側(先手なら5筋より左)に振って戦う戦法。 代表例:四間飛車、中飛車、三間飛車、向かい飛車 |
| 奇襲・力戦型 | 定跡から外れた独特な指し方で相手を翻弄する戦法。 代表例:右玉、袖飛車、地下鉄飛車、角頭歩戦法 |
また、対局の組み合わせによって以下のような呼び方もあります。
居飛車戦法は飛車を初期位置に据えたまま戦う戦法です。歴史的にも研究が深く、プロ棋士の間でも頻繁に指される王道の戦い方です。
居飛車の魅力は、攻撃力の高さと正面突破力にあります。飛車を中央に置くことで、相手陣地への直接的な圧力をかけやすく、速攻を仕掛けることも可能です。一方で、玉を守る囲いも堅固に組めるため、攻守のバランスを取りやすいのも特徴です。
ここでは、初心者から上級者まで幅広く使われる代表的な居飛車戦法を紹介します。
| 分類 | 相居飛車戦法 |
| 難易度 | ☆☆☆(中級者以上向け) |
玉を金銀3枚で厚く囲う「矢倉囲い」を双方が組み、じっくり駒組みしてから正面からぶつかり合う重厚な戦法です。「矢倉は将棋の純文学」とも称される伝統的な戦型で、お互いに最強の守りを築いてから戦うバランスの良い戦法として、プロでも頻繁に採用されます。
| メリット | 守りが堅く、正面からの攻防に強い互いに最強の守りを築いてから戦うため、バランスが取れている定跡が豊富でプロの実戦例も多く、学習しやすい |
| デメリット | 定跡手順が膨大で、中終盤まで研究され尽くしている初心者には難解で、知識差が出やすい速攻策(急戦矢倉)に対する対応も必要 |
| 分類 | 相居飛車戦法 |
| 難易度 | ☆☆☆(中級者以上向け) |
序盤早々にお互いの角を交換し合い、持ち駒に角を所持したまま進行する戦法です。角交換後は腰掛け銀や早繰り銀など様々な展開に派生します。互いに角を持ち合うため、いつでも好きな地点に角を打ち込める緊張感のある戦いが特徴です。
| メリット | 攻撃的でスリリングな駆け引きが楽しめるプロ公式戦でも現在主流の戦法で、最新理論の粋を競える豊富な定跡が蓄積されており、学習素材が多い |
| デメリット | 定跡化が進みすぎており、研究不足だと一瞬で形勢を損ねる初心者にはハードルが高く、対応パターンも多岐にわたる習熟しないうちは「角打ちのスキ」を突かれて潰されやすい |
| 分類 | 相居飛車戦法 |
| 難易度 | ☆☆☆☆(上級者向け) |
序盤で飛車先の歩を交換した際、さらに相手陣の横の歩(先手なら3四の歩)を飛車でタダ取りするところから始まる戦法です。お互いの飛車・角など大駒が序盤から飛び交う、激しい展開が特徴で、一瞬の隙が命取りになるスリリングさが将棋の醍醐味といえます。
| メリット | 序盤から主導権を握りやすく、一気に決着をつける破壊力がある大駒同士を交換して互いに持ち駒にするため、スリリングな展開になる多くのアマ愛好家を惹きつける魅力的な戦法 |
| デメリット | ハイリスク・ハイリターンで、一手のミスが即敗北につながる定跡も複雑で高度な読みが要求される序盤から終盤さながらの読み合いになるため、初心者には不向き |
| 分類 | 相居飛車戦法 |
| 難易度 | ☆☆(初級者~中級者向け) |
先手・後手とも積極的に飛車先の歩を突き合い、序盤から歩交換を行って進む戦法です。互いに飛車先を突破し合うような形になりやすく、スピーディーに駒が捌けるため、後手番でも互角に戦える場面は多いが、一般に後手有利と言えるほどではない。
| メリット | 序盤の主導権争いに強く、スピーディーに駒が捌ける後手番でも互角以上に戦いやすい棒銀戦法など様々な速攻策が有効で、初心者でも狙いが立てやすい定跡もある程度整備されている |
| デメリット | 玉を囲う暇なく戦いが始まるため、自玉の守りが手薄になりがち攻めが失敗すると一気に不利になる相手も同じ土俵で応じてくるため、互角の力だと長所を出しづらい |
| 分類 | 居飛車(対振り飛車含め応用可) |
| 難易度 | ☆(初心者向け) |
銀将を一直線に繰り出して攻めるシンプルかつ豪快な戦法です。飛車先の歩を突破し、その筋から銀と飛車で相手玉頭に侵入する狙いで、400年前からある古典戦法とも言われます。派生に「原始棒銀」「矢倉棒銀」などがあります。
| メリット | 銀と飛車の連携で一直線に攻める分かりやすい狙い初心者向けの戦法として最適序盤でリードを奪いやすく、素早い攻撃が可能対振り飛車にも転用できる応用力がある |
| デメリット | 攻め筋が単調なので、受け方を知っている相手には通じにくい上達してくると容易に受け止められ、逆用される無理攻めすると陣形が崩壊しやすく、力負けするリスクがある |
上記以外にも、対振り飛車の代表戦法として以下のような戦法があります。
左美濃(ひだりみの):振り飛車の美濃囲いに対抗して玉を左側に囲う作戦。対振り飛車戦で使われる居飛車の囲いの一つです。
居飛車穴熊(いびしゃあなぐま):振り飛車相手に自玉を右隅に深く囲って持久戦に持ち込む作戦。非常に堅い囲いで、攻めつぶされにくいのが魅力です。
右四間飛車(みぎしけんびしゃ):居飛車側が飛車を6筋(通常とは逆方向)に振って、振り飛車の美濃囲いを攻める奇襲戦法です。
振り飛車戦法は飛車を盤面左側に振って戦う戦法です。飛車をどの筋に振るかで、中飛車・四間飛車・三間飛車・向かい飛車などに分類されます。
振り飛車の魅力は、受けの強さと駒捌きの美しさにあります。一般に居飛車が攻め重視なのに対し、振り飛車は受けつつ捌く(駒をさばく)戦いが多い傾向にあり、カウンター狙いの粘り強い戦いが得意です。また、美濃囲いなど堅固な囲いを組みやすいのも特徴です。
ここでは、初心者から上級者まで幅広く愛される代表的な振り飛車戦法を紹介します。
| 分類 | 振り飛車 |
| 難易度 | ☆☆(初心者~中級者向け) |
飛車を先手なら6筋(後手なら4筋)に振る戦法で、振り飛車の代表格です。美濃囲いと組み合わせてバランス良く戦うのが基本で、「藤井システム」など画期的な派生も生まれています。攻守のバランスが良く、初心者にも取り組みやすい一面がある振り飛車戦法の一つです。
| メリット | 攻守のバランスが良く、初心者にも最適序盤から大乱戦になりにくく、駒組みに余裕がある駒を捌く感覚を掴みやすい相手の攻めを受け流しつつ隙あらば反撃するカウンター志向 |
| デメリット | 相手の急戦策に対して正確にさばく対応力が求められる駒の捌きに習熟するまでは、受けきれず負けが込むことも相手が穴熊など持久戦志向だと、攻め切る手段を用意する必要がある |
| 分類 | 振り飛車 |
| 難易度 | ☆☆(初心者~中級者向け) |
飛車を盤中央の5筋に振る戦法です。特に角道を止めずに飛車を振るゴキゲン中飛車(後手番での採用が主流)が有名で、現代振り飛車を代表する戦法です。他にも先手中飛車や原始中飛車(角道を止めて真ん中突破を狙う形)などの種類があります。
| メリット | 攻撃力が高く、飛車を中央から活用するため攻めの展開に持ち込みやすいゴキゲン中飛車は後手番でも主導権を取りやすい角道を開けたまま戦う形のため序盤から攻撃態勢が整いやすいアマチュアにも人気が高い |
| デメリット | 基本的に後手番専用戦法であり、先手番の指し分けを用意する必要がある振り飛車の中では急戦志向で、捌き(駒さばき)の感覚が要求されるカウンターを受けないよう経験も必要 |
| 分類 | 振り飛車 |
| 難易度 | ☆☆~☆☆☆(初級者~上級者まで幅広く使用可) |
飛車を先手なら7筋(後手なら3筋)に振る戦法です。四間飛車より一筋左に寄っただけですが、角道を止めないで戦う場合は飛車先突破と角の利きが同時に通る独特の布陣になります。古くからあるノーマル三間飛車に加え、飛車・角・銀・桂を総動員して攻める石田流三間飛車が有名です。
| メリット | 相手の速攻(居飛車急戦)にも対応しやすく、持久戦にも移行できる万能型大駒さばき重視の戦法石田流は狙いが明快で攻めが豪快なため、初級者から高段者まで人気飛車先を伸ばし角筋も通す石田流は攻撃の理想形で破壊力抜群 |
| デメリット | 攻撃力が高い反面、自玉の囲いが薄くなりやすい相手に十分な受けの知識があると、攻めを空振りして不利になることもノーマル三間飛車も居飛車穴熊に組まれると持久戦で分が悪い場合がある |
| 分類 | 振り飛車 |
| 難易度 | ☆☆☆(中級者向け) |
飛車を先手なら8筋(後手なら2筋)に振る戦法です。相手の飛車と同じ筋で真正面から向き合う形になるためこの名があります。振り飛車の中では採用率が低めですが、「ダイレクト向かい飛車」などの派生もあります。
| メリット | お互いの飛車が一直線に向き合うため、即座にカウンターを狙える相手が飛車先を伸ばしてきたら逆襲しやすい居飛車穴熊を簡単に組ませない牽制になる採用が少ないため相手が対処法を知らずに混乱する可能性が高い |
| デメリット | 研究され尽くした戦法ではないため、自分も未知の局面を戦う覚悟が必要守りの美濃囲いとの相性もやや難しく、玉形が安定しにくい奇襲戦法扱いされることもあり、対応策を用意されると優位を築きにくい |
上記以外にも、以下のような派生戦法があります。
ゴキゲン中飛車:角道を止めずに5筋に飛車を振る中飛車の一種。特に後手番で威力を発揮し、序盤から主導権を握れる攻撃的な戦法です。
石田流三間飛車:三間飛車の派生で、飛車・角・銀・桂を総動員して攻める豪快な戦法。攻撃の理想形とも呼ばれます。
振り飛車穴熊:振り飛車側が穴熊に組む戦法。非常に堅い囲いで、対抗形でも持久戦に持ち込めます。
居飛車・振り飛車に収まらない変則的な戦法や、奇襲戦法もいくつか存在します。これらの戦法は定跡が確立されていないものが多く、相手の意表を突くことで優位に立つことを目指します。
奇襲戦法は、相手が対策を知らなければ一気に優勢を築けますが、知っている相手には通用しにくいという特徴があります。そのため、リスクとリターンを理解した上で使うことが重要です。
ここでは右玉・袖飛車・地下鉄飛車・角頭歩戦法といった、ややマイナーながら知っておきたい戦法を紹介します。
| 分類 | 居飛車(変則的な囲い) |
| 難易度 | ☆☆(初級者~中級者向け) |
玉将を初期位置付近の右側に残したまま戦う独特な戦法です。通常は玉を左側(玉頭方面)に囲うのが基本ですが、右玉はあえて玉を右陣にとどめて中央~右辺の戦いに備える構えで、対抗形では奇襲効果もあります。
| メリット | 玉周りの構えがシンプルで組みやすく柔軟囲いを深く組まない分攻撃に転じる速度が速い相居飛車・対振り飛車いずれにも一局通せる汎用性相手が対策を知らないと意表を突かれて困る |
| デメリット | 玉を深く囲わない分、端攻めや斜めからの攻撃に弱く玉周りが薄い定跡が確立されておらず独力での対応力が求められる上手く守れないと一方的に攻め潰される危険もある |
| 分類 | 居飛車(奇襲戦法) |
| 難易度 | ☆☆☆(中級者~上級者向け) |
初手から飛車を3筋に振って攻める戦法で、飛車を袖のように斜めに動かすことからこの名があります。居飛車の一種ですが、奇襲戦法に分類されることも多いです。プロ公式戦で現れることはほとんどなくレアですが、攻撃力の高い有力な戦法として知られます。
| メリット | 序盤から3筋を突破していく鋭い攻めが持ち味採用例が少ないため相手も受け慣れておらず、対策がなければ格上にも一発入れやすい毎局使える戦法で汎用性もある |
| デメリット | 他の戦法に比べて定跡整備が進んでおらず、自力での研究が必要ハマらない相手には効果が薄い「場合の戦法」角交換されると2筋に隙が生じやすく不利になる |
| 分類 | 居飛車(対振り飛車策) |
| 難易度 | ☆☆☆☆(上級者向け) |
飛車を地下鉄のように自陣一段目を横滑りさせて遠くまで転回させる、ユニークな対振り飛車戦法です。具体的には、先手側が8九(後手は2一)まで飛車を引きつけてから、一直線に端まで走らせ、相手玉頭方面に飛車を移動させる作戦を指します。
| メリット | 相手の左辺(玉のいる側)を素通りして直接穴熊等の玉囲いを攻める大胆な狙い敵陣の弱点である端から一気に殺到できる振り飛車穴熊を攻略する切り札として有力藤井システムへの対抗策としても有効 |
| デメリット | 完成させるまでに多くの手数と準備が必要序盤で不備があると仕掛けられて失敗するリスク対応型の特殊戦法ゆえ、相手が特定の形に来ないと効果が薄い |
角頭歩戦法(かくとうふせんぽう):角の頭にある歩を突く常識外れの一手から始まる奇襲戦法。角交換から桂馬を跳ねる展開に持ち込み、振り飛車に転じて攻撃する狙いです。
鬼殺し(おにごろし):序盤から銀と桂馬を繰り出して強引に攻める奇襲戦法。対策を知らない相手には効果抜群ですが、知っている相手には通用しません。
パックマン:角と銀を使って相手の飛車を取りに行く奇襲。ゲームのキャラクターのように駒を食べていく様子からこの名がつきました。
戦法は自分の性格やプレイスタイルに合ったものを選ぶことが重要です。無理に流行の戦法を使うより、自分に合った戦法を極める方が上達への近道です。
ここでは、性格・棋風別、レベル別、そして先手・後手別におすすめの戦法を紹介します。自分がどのタイプに当てはまるか考えながら読んでみてください。
「ガンガン攻めたい!」「守りより攻めが好き」という人におすすめ。
「攻めも守りもバランスよく」「じっくり考えたい」という人におすすめ。
「粘り強く戦いたい」「カウンター狙いが好き」という人におすすめ。
「人と違うことがしたい」「意表を突きたい」という人におすすめ。
まずは1つの戦法を徹底的に覚えましょう。狙いが分かりやすく、定跡も比較的シンプルな戦法がおすすめです。
基本を押さえたら、より深い戦法にチャレンジしましょう。定跡の幅を広げることで、対応力が向上します。
高度な読みと研究が必要な戦法。棋力が十分に身についてから挑戦しましょう。
先手番は先に動ける利点を活かせる戦法がおすすめです。
後手番でも主導権を握れる戦法を選ぶことで、不利を最小限に抑えられます。
将棋の戦法は、序盤の指し方を決める重要な要素です。自分の性格やプレイスタイルに合った戦法を見つけることで、将棋がより楽しくなり、勝率も向上します。
戦法習得の3つのポイント
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